STM32(ST Core)を使ってみる

Arduino Core STM32(STコア)の使い方

Arduino環境でSTM32を開発する場合、コアライブラリが必要になります。
STM32のコアライブラリとしては、こちらのコアライブラリ(通称Mapleコア)が有名ですが、ほぼSTM32F103専用となっています。
こちらに ST Microが提供するコアライブラリ(通称STコア)が公開されています。
このコアライブラリはものすごい勢いでアップデートされていて、サポートするMCUが増えています。
サポート予定のリストがこちらで公開されています。

Arduino-IDEでSTコアをほとんど使ったことが無かったので、Arduino Core STM32の使い方を紹介します。
最初にこちらのページに従って、Arduino IDEのボードマネジャーを使って、Arduino_Core_STM32を組み込みます。
STコアのバージョン2.0から、IDEの環境ページに登録する追加ボードマネジャーのURLが変わりました。
URLが古いと以下の様に表示されます。

こちらがURLを変更した後の表示です。

Arduino-IDEでSTコアを使う場合、ファームの書き込みにはST-Linkを使います。
NucleoやDiscoveryなど「STLink Virtual COM Port」が使えるボードが必要です。

いきなり「STLink Virtual COM Port」が使えるボードをUSBに繋げても認識しません。
こちらのUSB Driverをインストールする必要が有ります。
よく似たドライバーがこちらに有りますが、Windows7用です。Windows10では動きません。

ドライバーのインストールが終わると、以下の様に新しいCOMポートが出現します。

STLink Virtual COM Portを認識したら、こちらのSTM32CubeProgrammerをインストールします。
Arduino IDEはSTM32CubeProgrammerを使って、ファームウェアをSTM32に書き込みます。
STM32CubeProgrammerはJavaで作られているので、Java Runtimeも必要になります。

ツール→ボードでターゲットボードのカテゴリーを指定し、ツール→Board part numberにターゲットのボードを指定します。
これを間違えると正しいファームが生成されません。
ツール→Upload methodにSTM32CubeProgrammer(SWD)を指定すれば、ターゲットのボードにファームを書き込むことができます。

書き込みが正常に終了するとArduino IDEには以下が表示されます。

     
              -------------------------------------------------------------------

                                    




              STM32CubeProgrammer
              v2.0.0                 




              

                   
              -------------------------------------------------------------------

              

              ST-LINK SN  : 0673FF495150807567043110

              ST-LINK FW  : V2J33M25

              Voltage     : 3.24V

              SWD freq    : 4000 KHz

              Connect mode: Under Reset

              Reset mode  : Hardware reset

              Device ID   : 0x410

              Device name : STM32F101/F102/F103 Medium-density

              Flash size  : 128 KBytes

              Device type : MCU

              Device CPU  : Cortex-M3

              

              

              

              Memory Programming ...

              Opening and parsing file: sketch_aug20a.ino.bin

               
              File         
              : sketch_aug20a.ino.bin

               
              Size         
              : 7468 Bytes

                Address       :
              0x08000000 

              

              

              Erasing memory corresponding to segment 0:

              Erasing internal memory sectors [0 7]

              Download in Progress:

              

              

              File download complete

              Time elapsed during download operation: 00:00:00.578

              Warning: No need to these parameters in start command: 

              

              RUNNING Program ... 

                Address:      : 0x8000000

              Application is running

              Start operation achieved successfully

NUCLEOシリーズはPA5がオンボードLEDなので、PA5をLチカすればオンボードのLEDがLチカします。
Arduino_Core_STM32がサポートしていても、STM32CubeProgrammerがサポートしてないボードだと、
この様なエラーになります。
この時は、STM32CubeProgrammerを一度アンインストールして、最新版をインストールしなおす必要が有ります、

     
-------------------------------------------------------------------

                                    


              STM32CubeProgrammer
              v2.0.0                 


              

                   
-------------------------------------------------------------------

              

              ST-LINK SN  : 066EFF534951775087182628

              ST-LINK FW  : V2J33M25

              Voltage     : 3.26V

              SWD freq    : 4000 KHz

              Connect mode: Under Reset

              Reset mode  : Hardware reset

              Device ID   : 0x467

              Error: Device not supported

              Error: flash loader cannot be loaded. FlashLoaderPath =
              C:/Program
Files/STMicroelectronics/STM32Cube/STM32CubeProgrammer/bin/FlashLoader/0x467.stldr

Nucleoを書き込み装置として使えば、BluePillやBlackPillのST-LINK専用ピンを使って、スケッチを書き込むことができます。
こちらやこちらにNucleoを書き込み装置として使う場合のジャンパーピンの切り替えと、SWDポートのピンマップが公開されています。
NucleoのSWDポートの1番ピンは出力ではなく、Vref入力です。
3V出力ピンは下の写真の位置です。

ツール→ボードに「Generic STM32F1 series」を指定すれば、BluePillやBlackPillにファームを書き込むことができます。

Maple Core用のBootLoaderが書き込まれているBluePhillやBlackPillでは、以下の様なエラーとなる事が有ります。

     
              -------------------------------------------------------------------

                                    














































              STM32CubeProgrammer
              v2.0.0                 














































              

                   
              -------------------------------------------------------------------

              

              ST-LINK SN  : 066EFF534951775087182628

              ST-LINK FW  : V2J33M25

              Voltage     : 3.25V

              Error: No STM32 target found!

このエラーが出たときは、NucleoのnSRTSピン(ボード上のSWDポートのPin#5)と、BluePhillやBlackPillの RESETピンを
繋げてやると、正常に書き込みができるようになります。
下の写真の黄色のジャンパーがRESETです。

一度書き込みが成功すると、これ以降はRESETを繋がなくても、書き込みができるようになります。

こちらのボードは20ピンのJTAG/SWDポートを持っています。
SWDポートのピン配置はこちらに有りますが、SWDIOとSWCLKを使って書き込みを行うことができます。
このボードも最初は全く書き込みができませんでしたが、RESETをつなげてやると書き込みができるようになりました。

こちらのボードはMapleMiniのクローンです。

ST-LINK専用ピンも、JTAG/SWDポートも有りませんが、以下のピンをSTLinkで使うことができます。

ST-LINK	MapleMini
SWDIO	PA13
SWCLK	PA14

MapleMiniのピン配置はこちらが見やすいです。
これも、最初は全く書き込みができませんでしたが、RESETを繋げたら解決しました。

こちらのボードはMapleのクローンです。

ボード上にST-LINK用のピンが出ていますが、マーキングが分かりずらいです。

ST-LINK	Maple
SWDIO	TMS
SWCLK	TCK

これも、最初は全く書き込みができませんでしたが、RESETを繋げたら解決しました。
ピンマップはこちらが見やすいです。

こちらのボードにはC8T6が実装されています。
ST-LINK専用ピンは有りますが、RESETピンが有りません。
この様なボードでエラーになるときは、Boot0のジャンパーを１側(ISPブートモード)に変更し、電源を入れなおします。
これで正常に書き込みができるようになります。
正常に書き込みができたら、Boot0のジャンパを0側(FLASHブートモード)に変更して、電源を入れなおします。
一度書き込みが成功したら、これ以降ブートモードを変更することなく、書き込みできるようになります。

STコアではF4ボードもサポートしています。
F4 Dicovery(STM32F407VG)を使う場合、スケッチ書き込み時に以下を指定すれば、このボードにファームを書き込むことができます。

F4 Dicovery(STM32F407VG)にはオンボードに4つのLED(PD12 PD13 PD14 PD15)が実装されています。
以下のコードでオンボードのLEDがLチカします。

static int led[] = {PD12, PD13, PD14,
              PD15};

              

              // the setup function runs once when you press reset or
              power the board

              void setup() {

                Serial.begin(115200);

                while(!Serial);

                Serial.println("Blink start");

                for(int i=0;i<4;i++) pinMode(led[i], OUTPUT);

              }

              

              // the loop function runs over and over again forever

              void loop() {

                static int pin = 0;

                Serial.println(" LED=" + String(led[pin]));

                digitalWrite(led[pin], HIGH);

                delay(100);

                digitalWrite(led[pin], LOW);

                delay(100);

                pin++;

                if (pin == 4) pin = 0;

              }

Nucleoを書き込み装置として、こちらのF407 VGT6(DIYMORE_F407VGT)に書き込んでみました。
このボードはSTMのF4 Discoveryと互換性が有りますが、値段は1/3です。

ボード表面のマーキングは「diymroe」とスペルが間違っていますが、裏面のマーキングは「DIY MORE」です。
こちらがホームページですが、なかなか面白いボードを開発・販売しています。

このボードにはST-LINK専用ピンは有りませんが、以下のピンをST-LINKで使うことができます。

ST-LINK	F407VGT6
SWDIO	PA13
SWCLK	PA14

ツール→ボードに「Generic STM32F4 series」を指定すれば、このボードにファームを書き込むことができます。
上の写真でLED2が光っていますが、LED2はPE0に繋がっています。

使う際にはBOOT0ピンにジャンパーが必要になります。

BluePillやBlackPillなど、Boot0/Boot1セレクターを持っているボードでは、
USB-シリアルアダプターを使ってファームを書き込むことができます。
Boot0をISPブートモードに変更し、USB-シリアルアダプターのTX/RXをSTM32のUARTポートに接続します。
ISPブートモードについては以下で詳しく紹介されていますので、ここでは省略しますが、
ISPブートモードを使うと、母艦となるNucleoは必要ありません。
ISPブートモードについては以下に詳しい説明が有ります。

https://ht-deko.com/arduino/stm32f103c8t6.html
http://jh1lhv.hatenablog.jp/entry/2017/01/30/225814

ISPブートモードでは、以下の指定でファームを書き込むことができます。
ファームを書き終わったら、Boot0をFLASH Bootモードに戻す必要が有ります。

STコアの1.6以降では、BluePillやBlackPillなどのSTM32F103ボードに対して、Maple DFU Bootloaderを使ってファームを書き込めるようになりました。
Maple DFU Bootloaderはこちらで公開されていますが、サポートしているのはSTM32F103だけです。
Maple DFU Bootloaderの書き込み方は以下で詳しく紹介されていますので、ここでは省略しますが、
Maple DFU Bootloaderを使うと、母艦となるNucleoは必要ありません。

https://ht-deko.com/arduino/stm32f103c8t6.html
http://jh1lhv.hatenablog.jp/entry/2017/01/30/225814

Maple DFU Bootloaderを書き込んだボードをUSBでWindowsPCに接続すると、新しいCOMポートが出現します。
以下の指定でファームを書き込むことができますが、Board part numberを間違えると一発でBootloaderを破壊します。
私はよく間違えるので、この方法は使っていません。

この様な中華STLinkモジュールを安価($2程度)に入手することができます。

ひと手間掛かりますが、この中華STLinkを使ってファームを書き込むことができます。
最初にArduinoの環境設定で「より詳細な情報を表示する」にチェックを入れます。

ボードを選んでスケッチをコンパイルします。
コンパイルが終わると、Arduino-IDEの以下の所にビルドされたhexファイル名が表示されます。

ビルドされたHEXファイルができています。

中華STLinkとターゲットボードを接続したらST-LINK Utilityを起動し、Target→Connectで接続します。

Target→ProgramのBrowseボタンでHEXファイルを指定し、
Startボタンを押せばArduino-IDEでビルドしたHEXファイルを書き込むことができます。

STコアのバージョンは以下のスケッチで確認することができます。
今のところ、バージョンを判定してコードを振り分けるような事態には遭遇していません。

void setup() {

                Serial.begin(115200);

              }

              

              void loop() {

                Serial.print("STM32_CORE_VERSION:");

                Serial.print(STM32_CORE_VERSION_MAJOR);

                Serial.print("-");

                Serial.print(STM32_CORE_VERSION_MINOR);

                Serial.print("-");

                Serial.print(STM32_CORE_VERSION_PATCH);

                Serial.print(".");

                Serial.println(STM32_CORE_VERSION_EXTRA);

                delay(1000);

              }

続く．．．．